ムネクリイロボタルの雄成虫
撮影:福冨孝義氏 
ムネクリイロボタルの雌成虫 

 ムネクリイロボタルCyphonocerus ruficollisは、林縁や林内、草地のやや湿った環境に生息します。生息地での個体数はそれほど多くありません。昼行性のホタルであり、コミュニケーションシステムは匂い(性フェロモン)と光を併用する CR システムに属すると報告されています( ohba, 1983 )。本種の山口県内の分布記録としては、 25 個体の標本、 1 つの文献、 2つの写真のデータから、山口県全域に点在することがわかっています。また、標本・写真記録から、山口県における本種成虫の発生時期としては 5 月下旬から 7 月上旬までと考えることができます。 クロクシヒゲボタルに似ていますが、本種は和名の通り、胸が栗色なので、区別がつきます。なお、下関市豊田町の本種生息地の一つでは、クロクシヒゲボタルと同所的に生息しています。


雄成虫の全形
雄の交尾器(スケールは0.2mm)
         川野(2006)より
ムネクリイロボタル雄の前胸背
ムネクリイロボタルの口器

 雄成虫の体長は 7.38±0.56(mm±s.d., n=9) 、前胸背の長さは約2.9mm、幅は約4.4mm。腹部6節には、痕跡的に小さな発光器が一対あって、夜になると持続的な光を放ちます。クロクシヒゲボタルの雄交尾器は、ウスグロボタルやヘリアカボタルなどに似ていますが、本種の交尾器は、前述種とは明らかに異なり、特徴的な形をしています。

本種の生息地は、林縁や林内、草地のやや湿った環境です。オバボタルと同所的に生息している場合が多く、オバボタルが生息している場所を丁寧に調査すると得られることがあります。

ムネクリイロボタルの生息地
 
雄の触角
雌の触角

 雄と雌を区別する場合は、触角を見れば、一目でわかります。雄の触角は、櫛状に分岐していますが、雌の触角はそうなりません。この違いは、コミュニケーションが関係していると考えられます。雄は、雌が放つ匂い(性フェロモン)を受容する必要があります。そのためには、性フェロモン受容器の触角の受容面積を大きくして、雌が放つ性フェロモンを受容しやすくする必要があるのです。


本種は、匂い(性フェロモン)だけでなく、光も出すことができます。痕跡的でゲンジボタルなどに比べたら小さな発光器ですが、6節腹面に一対あります。夜になると、持続的な光を放ちます。この光は、一見するとオオマドボタルの幼虫の発光に非常に似ています。

雄成虫の腹面(矢印は発光器を示します)
 

 ※より詳しく知りたい方は当館の刊行物の内、 研究報告書、自然ガイドシリーズをご参照ください。



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