オオマドボタルの雄成虫 
オオマドボタルの雌成虫 

オオマドボタルは九州、四国、近畿地方以西の本州に分布するホタルです。本州以東には本種に近縁なクロマドボタルというホタルが分布します。この2種については交尾器の形状や生態、コミュニケーション・システムなどに大きな違いが認められないので同一種と考えられることもありますが、鈴木ら (1998) によるミトコンドリア DNA の遺伝子解析によると、別種の可能性が高いとの結果が得られています。オオマドボタルは昼間も夜間も活動し、匂い(性フェロモン)と光を使い雄と雌がコミュニケーションをとると考えられています(大場, 2005 )。このようなコミュニケーション・システムはムネクリイロボタルと同様で「 CR システム」と呼ばれます(ohba, 1983 )。

        

雌は翅が退化して飛ぶことができない体をしていて、雄は和名の由来となっている前胸背の前方に一対の透明な「窓」のような部分があります。成虫は5月下旬〜7月上旬に見られ、 下関市豊田町 では6月下旬に発生ピークがあると考えられます。

深い樹林を控えた湿った林縁や山道、人家の庭などに生息しています。下関市豊田町 では比較的普通に生息しています。下関市豊田町の本種生息地では、タキガワオオベソマイマイやオカチョウジガイ、ツクシマイマイ、カワモトギセル、リシケオトメマイマイの近縁種などの陸生貝類を餌にしていると思われます。
オオマドボタルの生息地
 

雌にマウントする雄(上が雄)
産卵した雌と卵(右下が雌)

雄は葉上にとまり触角を V 字形にして頭をゆっくりと左右にふる行動をとります。この行動は雌が出す匂い(性フェロモン)を探している行動と考えられ、そのことを支持するように性フェロモンを感知しやすいよう常に風下にいて風上に頭を向けます。探雌行動については、参考までに同属のオキナワオバボタルの映像をご覧ください↓。                       雌が出す匂い(性フェロモン)によって誘引された雄は雌の上に乗り交尾に入ります。交尾を終えた雌は約 2 mmほどの卵を十数個産卵します。産卵場所は飼育下での観察しかありませんが、コケや土の上などで行なわれます。卵期は室温で 37 日(一例のみの観察)。



オオマドボタルの交尾行動の映像(上がオス、下がメス)

孵化直後の幼虫
タキガワオオベソマイマイを捕食する幼虫 

幼虫は湿った林縁部の土上もしくは葉上にいて陸生貝類を捕食します。 豊田町 の本種の生息地にはタキガワオオベソマイマイやオカチョウジガイ、ツクシマイマイ、カワモトギセル、リシケオトメマイマイの近縁種などが同所的に生息しています。 幼虫は夜間頻繁に発光するので、夜林道などを歩いていると比較的簡単に見つけることができます。生息地での観察によれば、日没後、点滅しない持続的な光を数秒〜数分間放ち続けます。 2005 年6月17 日の豊田町 での観察によれば、 20 : 03 に観察場所の照度が0 lux になり、 20 : 17 から次々と発光をはじめました(観察時の温度と湿度: 22 ℃、 75 %)。    

脱皮の殻
オオマドボタルの蛹(左♀、右♂)
雄の蛹(前面)
雄の蛹(側面)
雄の蛹(背面)
雌の蛹(前面)
雌の蛹(側面)
雌の蛹(背面)

ゲンジボタルやヘイケボタルは土の中に潜って蛹になりますが、このホタルは潜ったり、蛹室を作ったりしないで土の上で蛹になります。蛹になって約10日後に羽化して成虫になります。羽化の様子は下の「NEXT」ボタンを押して時間を進めて観察してみてください。コマ間は1分です。


雄の羽化
雌の羽化

番外
 オオマドボタルの雌成虫を観察していると、いくつかわからない行動をとります。その一つが、体を反って、すべての脚を広げる行動です(映像参照)。この行動が、雄を呼ぶための性フェロモンを放つための行動なのか?、それとも、外敵に自分を大きく見せる行動なのか?、ただ脚を広げてみたいだけなのか?
  観察数が少なくて正確な行動理由はわかりません。今後条件を変えて観察し、行動理由を調べていきたいと考えています。このホタルは本当に調べれば調べるほど面白いホタルです。

すべての脚を広げるオオマドボタルの雌成虫1

すべての脚を広げるオオマドボタルの雌成虫2

 ※より詳しく知りたい方は当館の刊行物の内、 研究報告書、自然ガイドシリーズをご参照ください。

 

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